老人の精神的健康について
2000年4月から介護保険が始まりましたが、それに象徴されるようにこれから日本は超高齢化社会に突入してきます。
老人の精神障害といいますと、痴呆が一番注目されますが、老人の精神的健康、老人を取り巻く社会生活や環境を考えると、老年期うつ病は重要な病態です。
地域差がありますが、8%前後の有病率が報告されています。また、老人の自殺者の8割はうつ病であると言われています。
どんな症状があるのでしょうか
症状として
- 不安焦燥
- 意欲の低下
- 体重減少
- 不眠
- 疲労感
- 実際には問題がないのだけれど、身体の不調がみられる、心気症状
- お金がない等と訴える(貧困)妄想
- 考える力が低下し、まるで呆けた様に見える、仮性痴呆
- 死にたい気持ちになる希死念慮
等があります。
何歳ぐらいから、この老年期うつ病について注意したらいいのでしょうか
まず老年期には、初老期のものも含まれます。
精神医学的には厳格な年齢の定義はありませんが、女性では閉経期である40~60歳、男性は50~65歳から加齢による問題が出てきます。
65歳以上の老人についての調査によりますと、身体疾患に伴ううつ病が最も多く見られますが、
身体疾患の方に注意ばかりが行き、うつ状態が見落とされやすいと指摘されています。
老年期うつ病の原因はなにかありますか
高齢での発症ほど遺伝的要因は少なく、発症に関与する要因として
- 他の病気になったショックによる反応性のうつ状態
- 身体疾患に誘発されたうつ病
- 身体疾患の症状としてのうつ病
があり、うつ状態を伴いやすい身体疾患として、
- 身体疾患
- 本態性高血圧症
- 冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)
- 胃潰瘍
- 潰瘍性大腸炎
- 慢性膵炎
- 糖尿病
- 慢性関節リュウマチ
- 甲状腺機能低下症
- 悪性腫瘍(がんその他)
- 脳器質疾患
- パーキンソン症候群
- 脳動脈硬化症
- 脳血管性痴呆
- アルツハイマー型老年痴呆
- その他
- 慢性難治性疾患
- 各種の手術後
- ある種の薬物使用(reserpinその他)によるもの
などの、身体疾患、脳器質疾患があります。
その他、難治性疾患や手術後や薬物等も要因になります。
これら病気に関係するものの他に、生活や環境的な物も原因になってきます。
- 仕事を続けなければならないという負荷
- 引退や定年にみられる役割の喪失
- 仕事の喪失
- 経済上の問題
- 健康の障害
- 妻や夫、友人等の死
- 家族に対する心配
- 生活習慣の変化(孤独)
があります。
何か予防法はありますか
高齢者がうつ病を予防する注意点として
- 若いときから(趣味、ボランティア等で)老後に備える
- 多様性のある生き方
- 孤立しない人間関係とともに自分だけの時間を大切にする
- (大事なこととそうでない事に)優先順位を付けられるか
- 曖昧さに耐える能力
- 必要な援助を他人に求める態度
- 過去にこだわる態度から「今、ここで」の発想への転換
- 無駄な時間を無駄に過ごす能力
- 老化を受け入れる(健康な諦観)
- 主導権を徐々に若い人に譲り渡す
等が言われています。
この病気は多い病気であることを知っていただきたいと思います。
どうしても、自己コントロールが出来ない方は、精神科等の専門医を受診されたらと思います。