Q. 食事を吐く娘との接し方は
19歳になる娘が、2年前から食事をしたら吐くということを繰り返します。テレビ番組でモデルさんが「吐いてスタイルを維持している」というのを聞いてから、そうなりました。注意しても治りません。周囲がどう接したら治すことができるのでしょうか。また病気だったら何科で、どんな治療がなされるのでしょうか。(鹿本郡、主婦、42歳)
A. 理解し支える姿勢が大切
娘さんの体重が極端に変化して、体重増加と肥満への強い恐怖やこだわりがある場合、摂食障害の可能性があると思います。
この障害は、拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)の二つに分けられますが、病態は表裏の関係で移行したり重複したりすることがあります。それぞれ、吐いたり下剤を使用する「パージング」という自己排出行動が出現するタイプと、それが見られないタイプにさらに分類されます。この疾患は特に思春期の女性に多く、近年増加傾向にあります。
ご質問にありましたようにダイエットを契機に発現するものが最も多く、原因として心身のストレスやトラウマなどを含む心の問題や、家族や社会、文化を含む環境的要因、遺伝などの生物学的な要因などが複雑に絡み合って起こされていると考えられます。体重が標準体重マイナス20%以上とやせていて、食行動の異常(不食、大食、隠れ食いなど)がある方は、拒食症の可能性があります。
本人が考えている体型と実際の体型との間にズレ(ボディーイメージのひずみ)がみられることがあり、それがエスカレートしていくと、いくら痩せて骨と皮になっても満足できず本人は太っていると感じてしまい生命の危険を脅かす状態になる場合もあります。
また、むちゃ食いが繰り返しあれば過食症と診断されます。
これらの治療は精神科や心療内科で行われ、重度の低体重には栄養補給などの身体療法、心理的な治療として認知行動療法や家族療法などがあります。薬物療法としては抗うつ剤や抗不安剤が使用されます。
背景にトラウマを持っている場合もありますのでそれに注意しながら対応も必要でしょう。もしトラウマがあるようでしたらそれらの治療も必要になります。
家族の接し方は、環境や背景によって異なってきますが、傷つきやすい状態に陥っていることに配慮しながら、病気や本人を理解し支える姿勢が大切です。本人が受診を拒否する場合には、無理には勧めず、まず家族の相談から始めてみてはいかがでしょうか。
15歳以上の標準体重換算法(BMI)
BMI=体重(kg)/(身長(m)x身長(m))
身長160cm以上 〔身長(cm)-100〕×0.9 (kg) |
身長150cm以下 〔身長(cm)-100〕(kg) |
身長150cm~160cm 50+〔身長(cm)-150〕×0.4 (kg) |
<18.5 | 低体重 | ||
18.5≦ | ~ | <25 | 普通体重 |
25≦ | ~ | <30 | 肥満度1 |
30≦ | ~ | <35 | 肥満度2 |
35≦ | ~ | <40 | 肥満度3 |
40≦ | 肥満度4 |
神経性無食欲症について
単一エピソードでその後自然回復するものから何回も軽快と増悪を繰り返すものや慢性的に経過するものまで様々です。全体の40%の患者が完全に回復し、30%は、部分的に改善。20%は改善の兆しのないまま重篤な病状にとどまるといわれています。神経性食思不振症の死亡率は22%と高く、その中には慢性の症例の2~5%にのぼる自殺が含まれます。
厚生省研究班の診断基準(1990)
1)標準体重の-20%以上のやせ
2)食行動の異常(不食・大食・隠れ食い など)
3)体重や体型について歪んだ認識(体重増加に対する極端な恐怖など)
4)発症年齢:30才以下
5)無月経(女性の場合)
6)やせの原因と考えられる器質的疾患がない
活動 | 身体因 | 無月経 | 盗食・過食 | 問題行動 | 心因 | |
神経性無食欲症 | + | - | + | + | + | + |
やせ | - | + | - | - | - | - |
70%が軽快し30%が過食や嘔
神経性大食症について
吐を続けるといわれています。また、大学生年齢の人口の13%(19%が女性・5%が男性)が、歪曲したボディ・イメージを持ち、自身の体重が医学的標準内にもかかわらずもっとやせたい、自分は太っていると感じているという報告があります(Halmi)。
食べ物の事で頭がいっぱいになっていたり、気晴らし食いをしたりがみられることがあります。精神症状としてうつ状態、不眠、いらいらして怒りやすかったり、閉じこもりがちになり、不眠もみられます。からだの問題として無月経、低体温、浮腫がみられる場合もあります。