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相談室便りこころの貯金

こころの貯金

年明けから年度初めにかけて毎年のように、今年こそは預金するぞと意気込んでみたりしますが、なかなか貯金というものはむつかしいものです。実際に私は貯金というものをほとんどしたことがない人間で、ある程度貯めても、使い切るなんてしょっちゅうですし、「○○をする」とか目的がなければとても続きません。それくらい、必要なものを貯めることは簡単ではないのだなと思っています。

今年も、「今度こそはちゃんと貯金するぞ」と実現する可能性の低い決意をした時、『ためる』『たまる』という言葉が浮かびました。ここから、こころにつなげていろいろなことを連想してみると、思い出や記憶といったものが浮かんできましたが、同時に疲れや不満といったマイナスのものも浮かんできました。こう考えると、こころにたまるものは澱のように蓄積して、よい効果をもたらさないものが多いように感じられるかもしれません。

だからといって、こころの中にあるものは、マイナスのものばかりではありません。良いものも確かにあります。お金や賞状のように目に見えるものではありませんし、なかなか自分では実感できないこともしばしばあります。

見えないけれど、こころの中にある良いもの、それは『経験』です。そう言われても、あまりピンとこないかもしれません。と言うのも、人はマイナスのものに目を向けやすく、プラスのものは当たり前になって忘れやすいからです。例えば…、初めて立った時の感動を覚えている人はいるでしょうか?少なくとも、私は覚えていません。初めて立とうとした時をイメージしてみましょう。まず、何かに掴まって、そこを支えにしながら、足を踏ん張ってみます。勢いよく世界が広がった感覚があったとしても、直ぐにバランスが崩れて尻餅をついてしまいます。そこで泣いちゃうこともあるでしょう。それでもへこたれずに、もう一度何かを掴んで、足をしっかり踏ん張ろうとしてみます。ちょっとフラフラすることもありますが、しっかりと立てたとき、それまで見ていた世界が広がって…。その時、どれだけ感動し、喜んだのでしょうか?その時の赤ちゃんの顔を見ると、それは何とも言葉にできない素敵な経験だったのだと想像できると思います。それが何度もできるようになってくると、あの時の感動を味わえなくなり、当たり前になってしまうのです。

そう考えると、目の前のプラスのことが当たり前になり、マイナスのことに目が向きやすくなって、それが『たまっている』ように感じられることもうなずけます。

では、どのようにすれば良い経験を思い出すことが出来るようになるのでしょうか。それは、自分にとって当たり前にできるようになったことを、一つ一つ思い出してみることかもしれません。一見ただの石ころに見えても、磨いたり鍛えたりすることで光り始めるということは非常に多いのです。ただ、このような作業は1人では大変なことが多く、なかなか光るものに気づけないことがあります。ですので、信頼できる誰かと一緒にその作業をしてみるとよいと思います。別の誰かの視点から見ると、実はとても良いことだったと気づくことも多いのです。普段は気づけなくても、自分の中に確かなものとして、きっとそこにあると思います。

自分の中にあるプラスのものを見つけに、心のケア相談室に来てみませんか?